お薬手帳の歴史を整理してみた話
ちょっと最近記事を書かなさすぎなので😅
以前自分の勉強用にまとめた内容でチャチャっと書けちゃうこの内容にしました(手抜きですみません。。。)
要点
2000年 「お薬手帳」爆誕
念の為大前提から😅
お薬手帳とは、患者さんが複数の医療機関から処方された薬の情報を1冊にまとめることのできる小型のノートです。重複投与や相互作用を防ぐために作られたもので、患者さんの健康被害を防ぎ医療費削減に役立てる目的があります。
運用が始まった当初は、一部の調剤薬局や病院が始めた無料のサービスでした。これが正式に国の制度として採用されたのが2000年です。薬の飲みあわせのチェックや重複防止による医療費削減効果などが国から期待された結果です。またこれに伴い「薬剤情報提供料」という薬局の報酬が規定されました。
★ 薬剤情報提供料 ★
手帳を希望する患者に対して算定できる料金で、薬局はお薬手帳に薬剤情報を記入した場合に、処方せんの受け付け1回につき150円の報酬を得られることになっていました(患者負担は3割ならば約50円。算定できるのは月4回まで)。
でもこれって、患者さん側からしたら、お薬手帳を持って行ったら余計にお金が取られるってことなんですよね。今では全く逆の仕組みになっているんですが、一部の患者さんはこの時の認識のままでお薬手帳を持ってきてくれない(作らせてくれない)こともありますね😢
2011年 被災地での活躍から再注目!のはずが…
お薬手帳が注目されるきっかけとなったのが、2011年3月11日に発生した、東日本大震災です。
当時ニュースでも度々取り上げられましたが、現地の医療機関へのダメージは壊滅的な上、カルテや薬歴を記録しているPC類も紛失・破損、あったとしても停電などで機能しない状況でした。
そんな被災地において、お薬手帳を携帯していた患者さんはそうでない患者さんに比べて、スムーズに診察や投薬ができたという報告が相次ぎました。この報告が、お薬手帳の評価を大きく高めることになります。
翌年2012年には震災後初となる報酬改定が行われ、これまでの薬剤情報提供料を廃止し、薬剤服用歴管理指導料を新設しました。またこの時同時に、これまで任意であったお薬手帳への情報記載が義務化されました。
★ 薬剤服用歴管理指導料 ★
処方せんの受け付け1回につき410円(患者負担は3割ならば約120円)。ただし、この報酬を得るには、以下の5項目すべてを満たすことが条件でした。
しかしこの時、大きなミスを犯してしまいます😱
「手帳を持っていない患者には、薬の名称、用量・用法などが書かれたシールやメモを渡すだけでもよい」と規定されたのです。
これによって、患者にお薬手帳の重要性を啓蒙することなく、とりえあえずシールだけ渡して指導料を算定する(お金をもらう!)といったことが横行してしまったのです!
2014年 「手帳持って行かん方が安いで!」
震災後2度目の報酬改定です。ここで薬剤服用歴管理指導料が2段階に分類されます。
- お薬手帳での情報提供があり
→ 処方せんの受け付け1回につき410円(患者負担は3割ならば約120円)。
- お薬手帳での情報提供がなし
→ 処方せんの受け付け1回につき340円(患者負担は3割ならば約100円)。
つまり、お薬手帳の作成や情報提供を断った方が、患者さんの自己負担としては20円安くなるということです。
これによって生じた問題が大きく2つあります。
- 【患者さんサイド】お薬手帳への記載を断る患者さんが続出。
- 【薬局サイド】何が何でも情報提供したい(お金が欲しい)ので、お薬手帳を作ってシールを貼って渡す薬局が出現。これによって1人の患者さんが複数のお薬手帳を持つこととなり、元々の目的であった服用薬の一元管理ができない事態に。
この改定は、お薬手帳をめぐる諸問題を社会に周知するという意味ではいい機会となったのですが、お薬手帳本来の目的からは大きく離れたところに着地することとなってしまいました😔
2016年 三度目の正直
震災後3度目の報酬改定。またもや薬剤服用歴管理指導料が大きく変わります。
- 原則6ヶ月以内に再度処方箋を持参した場合
→ 処方せんの受け付け1回につき380円(患者負担は3割ならば約110円)。
※ 現在ではさらに改定されて410円(患者負担は3割ならば約120円)。
- 手帳忘れや、新規患者さん含め6ヶ月以内に再来局がなかった場合
→ 処方せんの受け付け1回につき500円(患者負担は3割ならば約150円)。
※ 現在ではさらに改定されて530円(患者負担は3割ならば約160円)。
これまでとは反対に、お薬手帳を持たずに薬局に来た患者の自己負担が高くなるように設定されました。これはすなわち、お薬手帳を携帯するように経済的側面から国として後押ししていることになります。
※処方せんの取り扱い枚数など薬局の規模によっては、おくすり手帳を持参しても薬剤服用歴管理指導料が安くならないケースもあります。
ここで起こりうる問題点としては、あえてお薬手帳の存在を患者に知らせない薬局が出現するかもしれない、ということです。
しかしこの時の改定では、薬局がおくすり手帳を持つ意義、正しい使い方などを患者さんに説明して、その必要性を確認することも義務付けています。その上であえて手帳を作らなかったり、複数の手帳を1冊にまとめなかったりして、薬剤服用歴管理指導料を多く徴収することになった患者さんについては、その理由を薬歴に記載することが通知されています。
つまり、国が薬局に対してお薬手帳の適切な使用と周知、啓蒙を釘刺しているということです。
結論:お薬手帳を忘れずにお持ちください
ここまで問題点を明確に示しために敢えて「薬局が金儲けを第一に考えている」かのように書いてきましたが、決してそうではありません(と、信じています)。少なくとも僕は、患者さんの健康を心から願っていますし、患者さんの健康な生活をサポートできる薬剤師でありたいと思っています。
そのためにも、どうかお薬手帳を忘れずにご持参いただくことをお願いします。お薬を定期的にお飲みでまだお手帳お持ちでない方もぜひ作ってもらってください(無料です)。
医療者の皆様におかれましても、再度お薬手帳にシールを貼る意味を考え直して(単なる作業と化していませんか?自戒も込めて)、服薬指導への積極的な活用や、患者さんへの周知を心がけていきましょう。