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自己満足を形にします。大学院生だったり薬剤師だったり。

仮想症例:エドキサバン減量基準ギリギリを攻めてきた患者

アンサングシンデレラが終わって初めての記事です。偶然にも同じようなタイミングで、コロナがやや落ち着いているってことで薬局バイトを再開できることになりました(いつまで続くかわかりませんが( ´Д`)y━・~~)

これからできれば毎週、症例報告をしたいなと思います(もちろん要となる部分以外は全て適当に改変します)。判断に迷った症例や、勉強になった症例を共有したいと思います。もちろん諸先輩方からのご指摘も受け付けております。

それではまず今回はエドキサバン減量基準ギリギリを攻めてきた患者」です。

 

エドキサバン(リクシアナ®︎)の減量基準は、薬剤師ならご存知のところかと思います。

  • 体重 60kg 以下
  • CCr 50 mL/min 以下
  • P-gp阻害薬の併用

これらのうち1つでも該当すれば、通常量 60mg/1 回/1 日を 30mg/1 回/1 日に減量せねばなりません。

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P-gp阻害薬については、正直フォローしきれないところでもあると思います。だってほとんどの薬がP-gp基質なわけで…記載されているアジスロマイシンやエリスロマイシンとかの、代表的なところを抑えるだけでいいかなって思います。

さて今回僕が経験した症例ですが、こんな感じの方でした(繰り返しになりますが患者情報は改変済みです)

  • 80歳代 女性
  • 最近の体重 63.8 kg
  • 最近のCCr  46.37 mL/min
  • 代表的なP-gp阻害薬の併用 なし
  • 当日より エドキサバン 60 mg/1回/1日 開始(初回)

杓子定規に規定に当てはめるとCCrが50 mL/min以下なので30 mgへ減量です。実際僕もそう思いましたので、病院へ疑義照会しました。

 

CCrが30~50mg/dLの患者では、腎機能正常者に比べてAUCが1.8倍上昇、t1/2が1.1倍延長することが報告されています。(参照:『腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧』日本腎臓病薬物療法学会, 2020年4月1日改訂, 33版)

医師に確認するから待ってくれと言われ電話をおくや否や、患者さんのご家族からお問い合わせいただきました。

「まだですか」

まだですごめんなさい。ODPも粉薬もあって調剤に時間かかってしまったんですごめんなさい。あと今結構大事な疑義照会中なので待ってくださいお願いしますごめんなさい。

実際すごい微妙なところというか、60 mgのままでもいいんじゃないか説も若干あったんですが、業務上少なくとも照会した記録だけは残しておかないと…。私見ですが、有効性より安全性をとるのが薬剤師だと思いますので、ここはなあなあにしたくなかったんです。

そうこうしているうちに病院から折り返しの電話がきました。結論から言うと、60 mgのままとなりました。ただそれは、当日担当医師が不在であったため、本人の判断を信じるという、ちょっと根拠として弱い(というか怖い)ものでした。

実際減量基準ギリギリですし、まあ病院がそういうなら、とそのままお渡ししました(めちゃくちゃお待たせして本当に申し訳ない…)。ただ情報提供書(トレーシングレポート)だけは改めてお送りしました。今回の一件で担当医と一度も話せていないので…。

次に同じような患者さんきたらどうしようかな…。少なくとも、今回と同じことをするとは思います。実際それしかできませんしね…。減量をすすめる何か強いエビデンスがあればいいのですが…。もしかすると単位オッズ比とか報告あるんですかね。体重1kg減少あたり、あるいはCCr 1 mL/min減少あたりのリスクがわかっているなら、それを記載したかったです。

ただただ有害事象が起こらないことを祈るばかりです。