仮想症例:腹痛にアセトアミノフェンは効くのか?
仮想症例の紹介です。ここのところ(いい意味で)大した患者さんも問題もなく、忙しかったけれどブログにするほどのこともない平和な業務が続いていましたので、久々ですね。
さて、今回は「電話で腹痛を訴えてきた患者」です。大したことなさそうですよね。実際大したことではないんですが、ちょっと判断に迷ったのでご紹介です。
患者さんの背景は今回どうでもいいので省略します。中年のおっさんかおばさんかとでも思ってください。別の疾患で定期通院されていたんですが、不定愁訴の多い方で、数日前から腹痛を訴えておられました。
電話でのやり取りはざっくり以下の通りでした。
まあ、そのために処方されているので、飲んでくださいって感じです…。下痢・発熱とかはないということでしたので、週末はそれで様子見ていただこうと思いました。
ただここですごく気になったのが、腹痛にアセトアミノフェンって効くのか??ってことです。
処方自体は一般的なようですが、添付文書の適応にはないんですよね。
効能又は効果
1. 下記の疾患並びに症状の鎮痛
頭痛,耳痛,症候性神経痛,腰痛症,筋肉痛,打撲痛,捻挫痛,月経痛,分娩後痛,がんによる疼痛,歯痛,歯科治療後の疼痛,変形性関節症
2. 下記疾患の解熱・鎮痛 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
3. 小児科領域における解熱・鎮痛
むしろ飲みすぎると副作用で腹痛あるらしいです。
重要な基本的注意
8. アセトアミノフェンの高用量投与により副作用として腹痛・下痢がみられることがある。本剤においても同様の副作用があらわれるおそれがあり,上気道炎等に伴う消化器症状と区別できないおそれがあるので,観察を十分行い慎重に投与すること。
薬理作用機序としては、効きそうな気もするのですが…。
薬効薬理
*シクロオキシゲナーゼ阻害作用は殆どなく,視床下部の体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張させて体温を下げる。鎮痛作用は視床と大脳皮質の痛覚閾値をたかめることによると推定される 6)。
6) ** ,*第十七改正日本薬局方解説書(廣川書店):C-126(2016)
添付文書では判断できないので、急性腹症診療ガイドライン 2015 を確認しました。CQ105を参照しました。
今日の臨床サポートでも、投与が推奨されていました。
ここでさらなる疑問。
- この患者さんの腹痛は「急性腹症」なのか?
- 経口のアセトアミノフェンでも良いのか?
1つ目については、CQ1に書かれていました。正直ビミョーですよね…1週間以内ってのは良さそうですが、手術レベルではないでしょう…(「お声聞いていると結構辛そうですね…」って言ったら「いや、そんなになんですけど…」って返されて「え、あ、そうですか…」って困りました。)
2つ目は、まあ成分が同じなので問題ないでしょう。こちらのサイトでも、「経口のアセトアミノフェンも同様に腹痛に対して効果があると考えられます。」とあります。
結論としては、飲んでもらってもいいんじゃないかなと思います。効くか効かないかはともかくとして、ですが…。
ちなみに腹痛については、僕の受験した第104回薬剤師国家試験で出題がありました。僕はわかりませんでした。こんなことまで訊かれるんですね…。
第106回まであと4ヶ月をきりましたね。全然まだまだ焦るような時期ではないです。ゆっくり頑張ってください。