アンサング・シンデレラ 第9話:解説と感想
オーバードーズの患者さんの演技がすごかった第9話。サムネに迷った挙句、イケメンに頼る。
全然解説することなくて、感想ばっかになって申し訳ないです…。
解説
オーバードーズと重複受診
オーバードーズ(Over-Dose、医薬品過剰摂取)とは、心身への悪影響を急性に生み出す量の薬剤を服用することを意味します。自殺企図の手段として最も多いことが知られている一方で、死ぬ意図のない自傷行為の手段としてもリストカットと並んで主要な位置を占めています。特に 20 ~ 30 歳代の女性に多いようです。
ODによる急性中毒を呈して入院した患者の多くは良好な臨床経過をたどりますが、誤嚥性肺炎などの合併症により入院期間が遷延することもあります。
国立大学法人東京医科歯科大学救命救急センターでの研究によると、原因薬剤としては抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬が大半を占めました。作中で服用されたロラゼパムもランクインしてますね。
治療や対処法について、体系的にまとめられた資料は見つかりませんでした。作中では患者の服用量コントロールが難しい注射薬の使用が見られました。余談ですがうちの祖父は点滴が遅いと勝手にクレンメをいじっていたようです。点滴だからって油断ならないかもですね。あとはやっぱり、心のケアですね。
また、服用衝動に対してプラセボ(偽薬、ただの乳糖)が処方されました。患者には黙って処方されることもあります。患者がプラセボ治療と知ったときに医療者や医療行為への信頼を喪失する危険があるのですが、今回はそもそもプラセボであると知らせていますし、患者さんも経験ありそうでしたね。
薬剤師はOD患者のゲートキーパーとして期待されています。ゲートキーパーとは自殺対策で提唱されている概念で、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る「命のサポーター」です。
薬剤師がゲートキーパーとして期待される第一の理由は、向精神薬などの処方薬を服用する患者との面会機会が多いことにあります。また、患者の服薬状況から処方薬乱用のリスクに気づき易い立場でもあります。
前回紹介した医薬品の勝手に分譲も含め、残薬やアドヒアランスの評価は大事です。ただ今回のように、重複受診となると、単一の薬局では発見は難しいかと思います(お薬手帳なんか使うわけもなく)。
相原さんが言っていたように、医療費の大半は税金などの公的資金で賄われています。冷静に3割負担でいいってすごいことですよ。少し古いですが、平成29年度の国民医療費は43兆710億円、現在まで単調増加を続けています。
ODに限らずですが、患者さんには少しでもこの意識を持って治療を受けて欲しいです。そしたら口が裂けても「もっとくれ」とか言えないと思うんですよね。花粉症薬とか保湿剤とか湿布とかの話だぜ。
重複がん(瀬野さんの場合)
同一個体に2種類以上の悪性腫瘍が発生し、病理学的に独立していることが証明されたものを重複がんと呼びます。 「病理学的に独立している」というところで、転移性がんとは区別されます(胃がんが肝臓に転移しても、それは肝臓がんではなく胃がん)。
- 指標腫瘍と二次腫瘍の両方で組織学的に悪性であることが確認されている。
- 腫瘍間に少なくとも2cmの正常粘膜があること。腫瘍が同じ位置にある場合は、少なくとも5年以上の期間を隔てていること。
- 一方が他方の転移である可能性を除外されること。
- 同期性悪性腫瘍:最初の悪性腫瘍と同時に、あるいは最初の悪性腫瘍から6ヶ月以内に発生した二次腫瘍
- 準同期性悪性腫瘍:最初の悪性腫瘍から6ヶ月後、あるいはそれ以降に発生した二次腫瘍
瀬野さんは肺がん+食道がん+副腎がんでした。Stage Ⅳということで転移があるのですが、多重がんも転移とみなされるんですかね? それぞれのがんの特徴を見ていきます。
肺がん
肺がんとは気管支、細気管支、肺胞の上皮から発生する悪性腫瘍です。2018年の部位別がん死亡率では、男性で1位、女性で2位となっています。 ちなみに罹患率では男性で2位、女性で4位です(2014年)。
肺がんは組織学的に非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分類されます。ほとんど(80%程度)は非小細胞肺がんであり、さらに大細胞がん、腺がん、扁平上皮がんに分けられます。それぞれの特徴を簡単に記します。
- 大細胞:肺がんの5%程度を占める。リンパ行性・血行性の転移を早期から認める。
- 腺:女性肺がんで多い。サーファクタントなどを分泌する。
→ 肺野部にできるので胸痛症状がある。また喫煙との相関は小さい。
- 扁平上皮:男性に多く、喫煙との相関が最も大きい。治療感受性が比較的大きい。パラトルモン関連ホルモンを産生し、高Ca血症や骨病変に繋がる。
- 小細胞:リンパ行性・血行性の転移を早期から認め、手術不能で最も予後不良。細胞の分化能が最も大きいため、治療感受性が最も大きい。PE(シスプラチン+エトポシド)、CE(カルボプラチン+エトポシド)、IP(イリノテカン+シスプラチン)、CAV(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン)療法など。
→ 肺門部にできるので咳嗽が出る。また喫煙との相関が大きい。
今回は非小細胞肺がんということで、第一選択は外科的治療になります。なお小細胞がんでは上述の化学療法や放射線療法が第一選択となります。
化学療法では、シスプラチンやカルボプラチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、ゲムシタビンなどを用います。特に、カルボプラチン+ペメトレキセドの併用療法は、寛解導入のファーストラインとして使用されています。ペメトレキセドは葉酸代謝拮抗作用のため、副作用予防のため投与7日前から葉酸投与を行います。
近年では以下のような分子標的薬も用いられます。
- ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ:EGFR阻害
- クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ:ALK融合遺伝子陽性症例に適応
- ニボルマブ、ペムブロリズマブ:抗PD-1抗体
- ベバシズマブ:抗VEGFR抗体
- ラムシルマブ:抗VEGFR-2抗体
食道がん
喫煙やアルコール、熱い飲食物、逆流性食道炎などの物理的刺激がリスク因子であり、胸部中部食道に発生することが多いです。ほとんどが扁平上皮がんで、腺がんはまれです。
早期では無症状であり、進行に伴って食事の際のつっかえ感、通過障害などを自覚します。さらに進行すると嚥下障害などにも繋がります。
治療は、早期では内視鏡的粘膜切除術が可能であり、第一選択となります。化学療法では5-FU+シスプラチン療法がメジャーです。
副腎がん
新規診断患者が年間約400人程度と、希少がんの一つです。
副腎は腎臓の頭側に位置している臓器(なので2個あります)で、生体の恒常性維持にかかわるホルモンを産生しています。組織学的に皮質と髄質に分けられます。
- 副腎皮質から発生する腫瘍:副腎皮質がん
- 副腎髄質から発生する腫瘍:悪性褐色細胞腫、神経芽腫、神経節芽腫
また、がん組織にホルモン産生の機能がある機能性腫瘍と、もたない非機能性腫瘍に分けられます。機能性腫瘍では、コルチゾール分泌によるクッシング症候群、アルドステロン分泌による原発性アルドステロン症、アドレナリン・ノルアドレナリンを分泌する褐色細胞腫があります。
治療にはミトタンという副腎皮質壊死薬を用います。とくに束状層や網状層に萎縮や壊死性変化をもたらし、またステロイド合成阻害作用も持ちます。ミトタンは正常な側の副腎にも抑制的に作用するので、副腎皮質ホルモンの補充が必要となる場合もあります。
ミトタンに加え、ストレプトゾシンやエトポシド、ドキソルビシン、シスプラチンなどを併用したレジメンが試行されていますが、確立された治療レジメンはありません。
セロトニン症候群
少し古いですが、厚労省からすごく綺麗にまとまった資料が出されていました。ここから適当に抜粋して紹介します。
セロトニン症候群は、 セロトニン作動性の抗うつ薬の投与中に出現する副作用です。抗うつ薬服用中に、急に精神的に落ち着かなくなったり、特に振戦、発汗、頻脈などの身体症状が認められた場合は、セロトニン症候群の可能性があります。中等度以上の症例になると、腱反射亢進、持続的なミオクローヌス・振戦に筋強剛が加わり、発熱も 40℃近くになります。
名前の通り、主な原因は脳内セロトニン活性の亢進によるものとされます。加えて、ドパミン神経系やノルアドレナリン神経系、他の神経系にも影響が及ぶことで多彩な症状を形成していると考えられています。
診断基準はいくつかありますが、以下の基準が簡便かつある程度特異的に診断できるようです。Hegerl らの診断基準、重症度の判定に最も有用ですが、質問項目が多く使用する上では煩雑な点があります。
作中では、患者はパロキセチンという選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を服用していました。抗うつ薬として、従来のものより安全に使えるということで、頻繁に処方されています。適応症にはうつ病、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害(PTSD)がありますが、いずれも1日1回 10 mg(〜20 mg)で開始します。瀬野さんが「昨日から」と言っていることとも矛盾しません。
実際、セロトニン症候群は服用後早期に発現するようです。被疑薬と症状が類似する悪性症候群との違いの一つに、症状発現までの時間が挙げられています。
セロトニン症候群の治療の基本は、原因薬剤の中止と補液や体温冷却などの保存的な治療となります。セロトニン症候群は一般に予後は良く、70%の症例は発症 24 時間以内に改善するといわれています。
しかし、高熱、呼吸不全、腎不全、DIC などを呈する重症例では、死亡に至る場合もあります。重症例に対しては合併症に対する治療を含む薬物治療が行われます。
非特異的セロトニン受容体遮断薬であるシプロヘプタジンは重篤なセロトニン症候群治療に用いられます。作中では用いられませんでしたけど、国試的にはこれが大事かな? 経口または粉砕後に経鼻胃管を介して 12 mg/日(その後反応が生じるまで2 mgを2 時間毎に、最大24 mg/日 を目安に)投与します。本剤は抗アレルギー薬として本邦で使用されています(添付文書上はセロトニン症候群への適応はない)。
ミオクローヌスや不安・焦燥に対しては、ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤が使用されます。作中でもジアゼパムの投与がされましたね。GABAA受容体/ベンゾジアゼピン受容体/Cl−チャネル複合体のベンゾジアゼピン受容体に結合し、抑制系神経伝達物質であるGABA のGABAA受容体への結合を亢進させ、Cl−チャネルを介したCl−の細胞内流入を促進します。ややこしいですね。
また、作中では悪性症候群の治療薬として認可されているダントロレンも用いました。リアノジン受容体を遮断することで筋弛緩に働きます。セロトニン症候群にも有効との報告もある一方、それを否定する報告もありその評価は定まっていません。ダントロレンがセロトニン症候群を悪化させることはないので、悪性症候群かセロトニン症候群か鑑別の困難な症例に対しては使用意義はあるとされます。
感想
逆流性食道炎です!
こんな血出る??? 暴飲暴食が過ぎるやろ。
その散弾銃を打ちまくれ
傷害罪じゃね? コード・イエロー、コード・イエロー(知らんけど)。
詳しくないからわかりませんけど、身体拘束は難しいかな…でも隔離は妥当かな? 単回だと許してくれる??
娘を連れてきたい
こういうのって主治医の承諾(せめて相談)要らんのか?って思ったけど、この時点だと一般病棟だから、制限ないんですかね。
マッチング中華
割と好きなセリフです笑 個人的には瀬野x葵よりかは小野塚x葵かなあ。
いやでもこれはもうできてんなあ…。”ついで”ってわざわざ強調するやつは、ついでじゃあないんよ。
不治の病ならば
どうすっかなあ。そんときの状況次第かなあ。残りの人生好きなことするぜ!って簡単には言えないっすね。でも近しい人との相談は必須ですかね。全部を一人で急に決めると良くないかも。
トイレに紙以外のものを流さないでください
病院のトイレ詰まらせたらおこです。ちなみに僕は子供の頃、食事の時嫌いだった野菜を口に含んでトイレ行って流してましたごめんなさい。あと菅田将暉さんが便器付け替え工事で27万払った話おもろいで好きです。
帰ろうよ…。
子どもからしたらトラウマもんかな…。
よく会いに来れたな、娘タフメンタル…。
薬を出せ
そもそも入れないはず…。うちの大学病院はセキュリティタグがないと入れないです。
ここまできたらもう警察案件では…。
ていうか薬散々散らかしやがってマジで心中穏やかじゃなかったわあ。廃棄も出たんちゃうかな、その分の費用ってどうすんねやろ。
あと1、2話でおしまいですかね。どうなる瀬野さん…!また来週!