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自己満足を形にします。大学院生だったり薬剤師だったり。

患者さんを不安にさせてしまった話

先日、薬局での体験です。お話を伺う中で、意図せず患者さんを不安にさせてしまいました。

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個人情報保護、守秘義務の点から、実際には存在しない(と思います)仮想事例として紹介させていただきます。

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その患者さんは、若い女性の方でした。主訴は右手の疼痛。手を使う仕事をされているので、医師からは腱鞘炎だろうとの診断で、湿布だけが処方されていました。

しかし通院期間がやや長いように思われ、湿布の漫然投与が続いていました。若い女性ということもあり、自己免疫性の若年性特発性関節炎や関節リウマチなどの初期段階の可能性はないかと、個人的に少し気にかけていた患者さんです。

そういった疾患であれば、右手以外にも症状が現れてくるかもしれないと思い、ある時こう尋ねました。

「今のところ痛いのは、右手だけですか?」

すると彼女は、驚いたような、悲しげな表情でこう答えました。

「これ以上、身体が悪くなるのは嫌なので…『今のところ』というのは、怖いですね」

ハッとさせられました。しまったと思いました。咄嗟に「今すぐ急激に悪くなることはないですよ」とフォローしましたが、彼女のぎこちない笑顔からは、取り返しのつかない言葉を投げてしまったのだと教えられるばかりでした。

彼女は内気な性格で、初めはなかなかお話を聞きにくい方でした。何回か来局いただいてお話を重ねる中で、少しずつ笑顔や思いを見せてくれ始めたと感じた矢先のことです。少しずつ築き上げた信頼関係を壊してしまったと、そんな気がしました。

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「臨床研究は、研究者が一生懸命になればなるほど、人権侵害になってしまう性質を持つ」

これは、研究倫理講習会のときに言われた一言です。守るべきルールの多い臨床研究ですが、担当者が熱心になればなるほど、良かれと思ってではありますが、結果として法規やルールを破ってしまいがちというお話でした。

今回の一件も、研究ではありませんが、同じだったと思います。患者さんに勝手に熱心になった結果、患者さんにとって大事なことを見落としてしまいました。

 

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おばあちゃんが言っていた。

男はクールであるべき。沸騰したお湯は蒸発するだけだ。

仮面ライダーカブト』 天道総司

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本気で殴り合えば多分お前の方が強い。だがお前は俺には勝てない。なーんでだ?

お前には遊び心がない。心の余裕がない。張りつめた糸はすぐ切れる。そういうことだ。

仮面ライダーキバ』 紅音也

 

何事も冷静に、平常心で。独りよがりではない、本当の意味で患者さんに寄り添えるよう、努力を続けます。

大切なことを教えてくれた患者さんに、心から感謝です。