抗菌薬の適正使用について思うこと①
先日、非常勤としてお世話になっている薬局で、次のような演習がありました。
💊薬品在庫不足・分譲演習💊
症例:40代男性。新規患者。仕事で忙しい毎日。処方内容は(1)抗生物質(2)去痰薬(3)総合感冒薬。薬局には(1)のみ在庫が無い。
薬剤師として取るべき対応を、優先順位をつけて整理してください。
先に、教えられた模範解答をお示しします。
患者は仕事で忙しいとのことで、対応に時間をかけすぎてはいけません。まずは患者さんに在庫が無いことを説明します。その際、分譲するなら少し時間がかかること、ご希望であれば直接お届けに伺うこと、処方箋は他の薬局でも受領されることを特に説明します。また、他の薬局をご希望の場合、こちらでどの店舗に在庫があるかまで調べてお伝えできれば良いです。
続いて、僕の用意した答えがこちらです。
処方内容から総合感冒が疑われるため、(1)の処方の必要性に疑念が残ります。処方医に疑義照会し、減薬があれば(2)(3)のみを調剤しお渡しします。変更がなければ、在庫が無く分譲をしなければならないこと、場合によっては時間がかかること、他の薬局でも処方箋は受領されることを患者に説明します。特に、時間に関する説明は十分に行うべきだと考えます。
最初のくだりさえ無ければ◎をもらえたのですが😅
昨今、抗生物質(抗菌薬)の適正使用については熱い議論がなされているので、「なるほど!単なる分譲演習では無いのだなこれは🤩!」と深読みした僕の負けです😅
抗菌薬の適正使用については昨今広くアナウンスされているので、今更ブログで取り上げても二番煎じどころでは済まないでしょうし控えます。
参考までに厚労省の公表している資料をお示ししておきます。
あとこちらは、年始に日本製薬工業協会が国宛に提出した意見書です。来月開催されるG20大阪サミットにおいて、抗菌薬の適正使用と薬剤耐性対策についても取り上げて議論してほしいと書かれています。
これだけ様々な提言がなされていても、現場では適正使用(不要な処方の削除)はあまり進んでいないように感じられます。特に、コミュニケーションの比較的とりやすい病院よりも、薬局の方が難しいのではないでしょうか。先ほどの演習問題においても、指導くださった薬剤師さんは「風邪でも抗菌薬は出す先生いるから。二次感染予防とかで重要だし。疑義照会は要らないかな」とおっしゃっていました。
正直、二次感染予防について言及されてうんざりしました。抗菌薬にそのような効果はないことは、10年以上前から示されています。
「短期間の服用だし疑義照会するほどのことでもないし面倒臭い」って言ってくれた方が幾分素直に納得できます。医療の世界にだって大人の事情はありますものね。
さて、このように抗菌薬の適正使用について、医療人の立場からの発言は多く見られます。
じゃあ、患者さんの立場としてはどうなんでしょうね?
例えば自分に子供がいたとして、風邪をひいたので病院に連れて行った時に、「風邪なので抗生物質は出しませんね」と言われる。これに対して「薬を飲ませて早く治してあげてほしい」そんな患者家族の訴えもありそうですね。
これにNoと言える薬剤師であるべきです。あるべきですが、それは薬剤師と患者との間のお話で、人間同士での感情的なお話では、親の不安に思う気持ちもわからなくはない気がします。
薬の適正使用については耳にタコができるほど聞かされている我々です。次は患者の立場について知見を広めてみるのも悪くなさそうです。
次の更新で、一つ面白そうな文献を紹介させていただきます。